2012年5月12日土曜日

モノを買わない中国・石化製品にも波

中国の実体経済の停滞は、多くの産業分野の取引現場で大きな影響をもたらし始めた。自動車や家電、日用雑貨まで幅広い用途がある石油化学の市場も例外ではない。

「来年2月の旧正月明けまでは回復しないかもしれない」。大手商社の中間原料の輸出担当者はこうため息を漏らす。今年の6月ころからから中国の需要が急速に落ち込み始め、4カ月がたった現在でも「回復の兆しがまったく見えない」というのだ。
 
原因は大きく2つある。まずは、今夏の北京五輪に向け前倒しで膨らんだ需要の反動が現れたことだ。道路のアスファルトの下にポリスチレンを敷くなど、インフラ絡みの需要も大きかった。個人消費も同様に五輪前に息切れしたようだ。

さらに大きな要因は米国を始め、世界景気の悪化だ。「世界の工場」と呼ばれる中国の生産活動は、当然、米国や欧州、日本などの景気の影響を受ける。特に昨年からの米景気の失速が効いている。現在の金融危機の広がりを見れば、当面は景気浮揚は望めそうにない。

実際、9―10月は米国のクリスマス商戦向けに石化製品などの素材の需要が高まる時期。11月に船積みして商戦に間に合わせるためだ。だが、玩具に使う塩化ビニール樹脂なども「ほとんど引き合いがない」(大手商社)状態だ。

最近の原油安で石化製品の価格は大きく値下がりしている。例えば、包装用フィルムなどに使うポリプロピレン樹脂の東アジア地区の価格は現在、1トン1330ドル(中心値)とピーク時の7月に比べ35%も安い。他の製品価格も同様の傾向を示す。

安い時に在庫を積み増し、上昇したら売って利ザヤを稼ぐトレーダーが活発に買いを入れてもいい価格水準だが、動きはない。

中国の変調が長引けば、日本の化学メーカーにも影響が及ぶ。一段の減産を迫られたり、輸出価格の下落で採算が悪化したりする可能性がある。今まで以上に中国経済の動向を注視する必要がありそうだ。