2012年4月25日水曜日

読者の反響 「世の中から取り残される」。

連載「生活ドキュメント 買い物難民」(2日~12日)に対し、手紙やファクス、電子メールなどで60通以上の反響が寄せられた。「自分も買い物に苦労している」「将来が不安になった」という声が多く、商店街の衰退や大型店の撤退などで、各地でこの問題が深刻化している状況が浮かび上がった。家売り苦渋の転居/商店主「宅配浸透せず」 近所に商店がなく水戸駅前まで買い物に来る85歳の女性は「バスのステップを上るのも一苦労」と話していた(水戸市内で)

福島県いわき市で息子と暮らす女性(68)は「私も買い物難民の一人」とつづり、ファクスで送ってきた。最寄りのスーパーまで歩いて約30分かかる。帰りは上り坂で、荷物を載せた自転車を押すのは負担だ。道も狭く、大型車の風圧にあおられ自転車ごと転倒したこともある。

「いつか大けがをするかも」と1年前から、行きにバスを利用するようになった。1日数本しかないため、帰りはタクシーを使うことが多い。出費を抑えようと買い物は週1回に減らした。息子は仕事が忙しく、めったに一緒に買い物には行けない。「買い物の苦労だけでなく、自分が世の中から取り残されつつある、と感じるのがつらい」という。

神奈川県山北町の女性(82)からは「私と同じように苦労している人が多いんだな、と痛感した」との手紙が届いた。自宅近くのスーパーが5年前に閉店。電車を乗り継いで1時間以上かけ、品ぞろえ豊富な小田原市まで買い物に向かう。

週2回の買い物を1回に減らしたので荷物が増えた。乗り換え駅はエレベーターがなく、買い物カートを引きずるようにして階段を上っている。「ひざも痛むし苦痛です。まだ元気だから出かけられるが、この先はどうなるか。近くに店さえあれば安心なのですが」とため息をつく。

買い物などの苦労を理由に、転居した人もいた。連載でも取り上げた埼玉県日高市の分譲住宅地「こま武蔵台」在住だった男性(80)。「家を売却し、今年3月東京都西東京市の賃貸マンションに移り住んだ」とはがきを寄せた。

「こま武蔵台」では、スーパーや銀行が次々に撤退。買い物などに車が欠かせなくなった。「いずれ運転できなくなったら、生活できない。地域に愛着はあるが、仕方ない」と、苦渋の決断を語った。連載では、高齢者らの買い物を支援する取り組みも紹介したが、そうした活動の難しさを指摘する声も目立った。

「ここ数年、シャッターをおろした店が目立つようになった。活性化のため地元の商店で無料宅配サービスを始めたのですが、なかなか住民に浸透しません」とファクスを寄せたのは、大阪府泉南市で園芸店を営む籔美紀さん(41)。

市の補助金も得て2004年に始まった事業で、電話注文を受け市内なら無料で配達する。しかし、利用者は伸び悩み、参加する85店のうち実際に受注があるのは半数程度。

ある青果店主は「少額の品をタダで届けてもらうのは気が引ける」と客に言われ、はっとした。「客と店の関係が希薄なのも利用が伸びない一因」と話す。ほかの商店主も「なじみ客が減っている。PRに向け、顔見知りを増やす工夫が必要」と指摘する。

参加店代表の殿谷忠正さん(61)は「高齢化が進み、今後ますます宅配サービスは必要とされる。地域密着の取り組みを続けたい」と話した。ほかの地域でも、買い物支援の継続に苦労しているケースがあった。行政も巻き込みながら、地域全体で対策を考えていく必要がありそうだ。

2012年4月20日金曜日

天然ゴム市場、24時間取引化に反対の声

国内最大の商品取引所である東京工業品取引所が来年5月に予定している取引の24時間化。これに異論を唱える声が天然ゴムRSS3号先物市場であがり始めている。
 
天然ゴムは上場品目の中で唯一、東工取の先物相場が国際指標になっている商品だ。原油ではニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物相場、金ならばロンドンの自由金市場の金塊現物相場、非鉄はロンドン金属取引所(LME)の先渡し相場。海外で指標が形成され、東工取市場ではおおむねその流れを映した動きになる商品がほとんどの中、天然ゴムの存在は異彩を放つ。

東工取市場はゴム輸入業者が多数参加していた旧東京ゴム取引所市場の流れをくむ。ヘッジ(保険つなぎ)の場として国内現物筋の参加は多く、タイの現物取扱業者やシンガポールの仲介業者も積極的に取引する。最近は欧米のファンド筋の利用も目立つ。多様な市場参加者による取引が指標としての信頼を高めている。

ただ、ある商品先物取引会社は「その多様性が24時間化では逆にあだとなる」と指摘する。現在も東工取市場で運用を行う、特に欧米を中心とした海外の市場参加者による取引が今までのような東工取時間に集中するのではなく、散らばってしまう可能性があり、「市場が間延びすることで、指標性を保てなくなるかもしれない」と危惧する。もし、東工取が指標市場という魅力を失えば、ヘッジ玉は別の市場へ移ってゆく可能性も否定できない。

東工取の総売買高は2003年から07年までに46%減った。08年もさらなる減少が確実視される。12月1日から株式会社となった東工取にとって営利追求の観点から、来年以降これ以上の売買低迷は避けたいところだ。

10月の天然ゴムの売買枚数は東工取上場商品の中で金、金ミニに次ぐ。東工取にとって天然ゴム市場の参加者は無視できない存在感を持つ。そこから投げかけられた24時間取引化への疑問符に東工取がどのように答えてゆくのか。市場の注目が集まっている。

2012年4月18日水曜日

「3K不況」に突入した鉄鋼業界

鉄鋼業界が「3K不況」に突入した。「金融」不安で輸出が急減する一方、国内では「建設」の不振に「車」の減産が需要を先細りさせる。衝撃の度合いは日産自動車が調達先を絞った1990年代後半の「ゴーン・ショック」を上回りそうだ。

いち早く需要が鈍ったのが建設分野。昨年の改正建築基準法の施行に加え、鋼材高と住宅市場低迷が需要を冷やした。

10月からは好調だった輸出にブレーキがかかる。根底にあるのは金融不安。米金融機関の資金引き揚げで新興国が自国通貨安に陥り、輸入抑制の動きが広がった。日本の鋼材輸出は「新規商談が成立しない」(東京製鉄)異常事態だ。

先行きの最大不安要因は自動車の失速だ。鉄鋼メーカーは自動車用の鋼材価格を他用途より低く抑えてきた。他業界からは「自動車優遇」とうらやむ声が聞かれた。

その自動車各社も減産のアクセルを踏み込んだ。若者の車離れはガソリン価格が下がっても変わらず、軽自動車シフトが進めば1台当たりの鋼材消費は落ちるとみるのが自然。ゼネラル・モーターズ(GM)に至っては米国が救済できるのかどうかすら分からない。

鉄鋼メーカーは「中級・高級品の価格は需給だけでなく、商品価値や顧客への提案力を勘案して決まる」(新日本製鉄)と強調する。だが高い車や住宅が売れない時代がくれば、高級鋼材も多く売れないかも知れない。過去の成功体験にこだわっている余裕はない。