2015年2月9日月曜日

所得は高くても購買力は低い日本

それ以外の六費目については、おおよそ、対応している。このように費目の対応が二つのデーターセットで違う場合には、通常、費目分割が粗い方のデーターセットにあわせる方がよい。もし、粗い方のデータではなく細いデーターセットに合わせようとすると、それこそ、経済企画庁に行き、原データから集計し直さなければならない。そのようなことは経済企画庁にいる人でなければ到底できない作業である。

ここまでは経済分析が行われる際の地道な作業について書いたが、ここから内外価格差がどのようになっているのかを具体的な数字をあげて説明しよう。一九九四年の『物価レポート』によれば、東京の価格はアメリカ合衆国やヨーロッパのどの都市よりも高い。平均的に東京の価格はニューヨークの価格の一・四〇倍、ロンドンの一・四六倍、パリの一・二六倍、ベルリンの一・八倍にもなっている。

この数字は東京を一に直すと、ニューヨークでは〇・七一、ロンドンで〇・六九、パリで〇・七四、ベルリンでは〇・七二という値になる。このように平均的にみれば、東京の物価はアメリカ合衆国やヨーロッパの諸都市と比較して四〇%は確実に高いことになる。それでは個々の費目の価格についてはどのような価格差があるのだろうか。これを次にみよう。

表には『物価レポート』によって公表され、私か推定のために加工したデータがある。ここでは四つの都市について、八つの費目の東京との価格比較が行われている。この表の見方は、ニューヨークやヨーロッパ諸都市の当該費目の価格を一〇〇としたとき、東京の価格はいくらになるだろうという指数である。食料費の価格を比較してみると、ニューヨークを一〇〇とすると東京の価格は一・六倍、ロンドンと比較すると東京の食料価格は二・二倍、パリやベルリンと比較しても一・九倍も高いということである。このように東京の食料価格が他の都市と比較して二倍もするということは、経済原則から考えても、なにか市場に大きな異常があるとしか考えられない。