2012年8月1日水曜日

民主党と共和党に代表される二つの考え方

公民権法を制定して黒人差別を廃止しようとしたのはケネディだったが、実際にこれが現実のものとなったのはケネディの死後であった。あるいは「貧困に対する戦い」と称して、国内の貧困対策や住宅問題に連邦政府のしベルでのり出しだのはジョンソン大統領である。

ジョンソンはみずからの一連の大型の社会政策を指して「偉大な社会計画」と称した。 政府はどこまで介入すべきか 民主党の掲げる政策ぱ、連邦政府を動かして社会や経済の制度に手を加えて企業の影響力を制限し、勤労者や農民の立場を強化するというところにその特徴がある。

共和党は逆に、政府の介入をできるだけ少なくして、自分のことは自分で始末することのできる体制を保持する、という政策を得意とする傾向がある。かつてアイゼンハワー大統領は、このような共和党の立場を肯定的にとらえて次のようにのべている。


民主党の皆さんは、共和党のことを実業界に属する政党というふうにいうが、私はその ことを自慢に思っている。実業界こそは、政府に頼らずにみずからの運命をみずから決めることができる能力を有している。実業界にとって望ましい状況というのは、アメリカにとっても望ましい状況のはずだ。

民主党と共和党に代表される二つの考え方というのは、ウィルソンあるいぱアイゼンハワーのような、政治の世界の頂点にいる人間だけが抱いているのではない。一般の国民のあいだにも似たような意見の分裂があり、むしろ民主党と共和党はその意見を反映しているのだといえる。

一九八〇年代半ばに、ミシガン大学の世論調査研究所が次のような質問を出して国民の動向を探ったことがある。質問のしかたがくどくどと長いのは、単純な「はい」「いいえ」という反応を避け、国民の本音を引っ張り出すための工夫である。


「失業や教育問題、住宅問題など多くの問題に対処するために、連邦政府がもっと多くの政策を実施すべきだという人がいます。あるいは反対に、政府はすでにあまりにも多くのことをやりすぎているという人もいます。総合的に考えた場合、あなたはどう考えますか。政府はちょうど良いくらいの政策を実施していますか、あるいはやり過ぎですか。それともまだ不十分ですか」。

この質問にたいして、みずからを強力な民主党支持者だと考えた人のうち四一パーセントが、いままで以上に政府はもっと多くの政策を実施すべきだとした。みずからを強力な共和党支持者だとした人で同じことを主張したのは、一一パーセントに過ぎない。

つまり民主党に属する人たちのうち半数ちかくは一層の政府の介入を希望し、共和党に属する人たちのなかでは、そのようなことを希望する者は一割程度である。