2015年12月8日火曜日

軍事技術上もっとも注目されたもの

イラク軍の戦車の主力はソビエトの一九七二年制式のT72であったが、アメリカの最新式のMIには歯がただなかった。MIエイブラムズのエンジンはガスタービンであり、有効射程三〇〇〇メートルのT一五ミリ砲を装備しており、T72のご一〇ミリ砲では貫通できない装甲で覆われていた。空中戦ではアメリカの空中警戒管制システム(AWACS)が決定的な役割を果たした。

八〇〇キ口遠方の目標を識別し、六〇〇個の目標を探知し、そのうち二〇〇個を選択し追跡できるボーイングEセントリーが八機投入された。イラク空軍機は離陸すると同時に、セントリーによってすべて探知され、多国籍軍の戦闘機部隊に知らされ、そこにアメリカ、フランスなどの新鋭機が殺到した。五〇〇機を擁していたにもかかわらず、イラク空軍は一機も敵機を撃墜できなかった。

軍事技術上注目されたのは、飛来するミサイルを迎撃するために開発されたアメリカのパトリオットシステムの性能であった。イラクは射程五〇〇ないし六五〇キロ、弾頭重量七〇〇キログラムのソビエト製スカッドを、サウジアラビアに四一発、イスラエルに三八発撃ち込んだ。パトリオットーミサイルはスカッドの前方に打ち上げられ、至近距離で爆発し、その破片でスカッドを破壊しようとした。当時、アメリカ政府と国防省は、九〇%以上の撃墜率だと発表したが、それは嘘であった。

後の九三年付けの朝口新聞は、戦争当時イスラエルの国防相をつとめていたアレンスが、MITの研究チームに対して、「正確な統計はないが、迎撃成功数はきわめて少ない。実際無意味(なほどの数)だ」と言明していたと伝えた。レーガン時代のSDIでも、その研究開発の一部として、迎撃ミサイルの実験が四回口で成功したと政府が発表したのは、ソ連に対しては車事力を誇示し、アメリカ議会に対しては予算を獲得するための嘘であったと、ニューヨークタイムズが報道したと、九三年八月一九日の朝日新聞が書いていた。現往問題になっているTMD(地域防衛構想)の実効性もどれだけあるものか、疑わしい。