2015年5月13日水曜日

矛盾命題を追求する組合

座間工場へ応援にいったある労働者は、同紙上でこう語っている。「はじめは妻が非常に不安かったので、九州の田舎に帰れと言ったのですが、子供がちょうど一歳になったばかりで、長旅もできず、そのまま留守をしています。応援に出るまでは、それ程気がつかなかったのに、こんなオヤジでも、やっぱりいた方が良いらしい(笑)んで、毎週顔見せに帰っています」

応援、出向は「余剰人員」を他の部署へ二時預かり”にする制度だが、それは一種のふるい落としにも利用される。「イヤならやめたっていいよ」という。効率化の別表現でもある。生産性向上が企業の至上命令であり、生産性向上競争は、ライバル企業との熾烈な利潤競争である。前に紹介した54P計画はその極限であり、日産はこれによって、トヨタひとり当たり年間生産台数四〇台に対して三五台と差がついていたのを、一気に追いつく作戦を樹てている。現場部門では年率一〇八-セント、目標年次までの三年間で三〇パーセントの生産性向上がそのスローガンである。が、これまでも、ほぼおなじスピードで、生産性向上はなされてきていた。七一年のひとり当たり生産台数を一〇〇とすると、七五年には一四四、四年間で四四八-セント向上の成果だった。

日産経営協議会が発行している「モーターエージ」(七五年一〇月号)には、「準直部門の効率化」についての部長の座談会が掲載されている。ここでの準直部門とは、「現場」における補助作業のことである。準直部門をいかに削減するか、という議論は、まずっぎのような問題意識から提起されている。「退職状況でみますと、直接部署は退職者の一番多かった昭和四八年から比べると現在はその数が三分の一に減っています。ところが準直部署の場合はそれがまだ半分程度までしか減っていない」(人事部第一労務課長)

つまり現場は三分の一に減らしたが、補助部門はまだ半分にしか減らしていない。もっと減らすためにはどうすればいいか、というのが、この座談会のテーマである。「栃木工場は当社では最新設備を有する工場としてスタートしました。人の面でも、特に準直、間接の数は、これで生産ができるかなと思う程の少ない人数でスタートしましたが、まだまだ合理化の余地は多分にあるのではないかと思ってます……それぞれの製造部署が直接品質について責任をもってやれば、車輛検査などの対外的になくす業務を除いては、検査はいらなくなっていくのではないかと思います。このような考え方をペースに現在、栃木工場は、準直貝を二割削減しようと取り組んでいます」(栃木工場第一製造部長)検査工はなくす、つまり安全よりも生産性向上の思想である。

追浜工場の検査部次長はこういう。「今年のはじめ頃から、工機工場と一緒になっていくつかのプロジェクトを組み、準直の効率化に取り組んできましたが、最近まとまったのをみますと、三億七〇〇〇万円位かけて一一五名程の省力ができる目途がでてきました」三〇〇万円かければ、ひとり削れるという。とにかく、人間を削って生産を上げるのが、生産性向上である。「村山工場はこうである。村山工場は合併後四、五年たった四六年頃組立ラインが長くなり、生産量も数千台から二万台に増え、それに伴って、間接・準直員も雪だるま式に増えました。従って、オフライン工場を比較すると悪い方の一位だったわけです。