2015年6月8日月曜日

信用収縮圧力の発生

こうした当局のスタンスは、金融システムが直面している問題があまりにも大規模なものとなっていることもあり、当局の対応能力に関する信頼性の低下を招いている。このように、バブル崩壊が金融機関への信頼性に相当のダメージを与えているなかで、金融システムの安定性維持が万全であるとは必ずしも想定し難くなっているのである。

バブルの破綻が銀行を中心とした金融機関への影響を介して、金融システムに思ってもみなかったインパクトを及ぼしている。大きくみれば二重のルートを通じて悪影響が表面化している。まず第一のルートは株価下落を反映した銀行の信用創造能力の著しい減退に関するものである。証券などの資産をバーゼル合意で取り決められた資産の種類ごとのウェート(リスクーウェートという)を使って、ウェート付きの資産として再計算し、それらを合計したものをリスクーアセットとして計上する。

そして、この算出されたリスクーアセットに対して、自己資本合計の比率を最低限で八%は維持することを要求している。このことは換言するならば、銀行は自己資本合計の十二・五倍までの範囲内でリスクーアセットの規模を維持すれば、八%の最低基準を満たすことが可能なことを意味する。つまり、自己資本が一単位増減するならば、リスクーアセットは同方向に二一・五単位も変化させうることになる。従って、BIS規制下では、銀行の自己資本の変動に対応する与信能力の変動倍率は、最大限で十二・五倍になる。

こうした自己資本の増減に対するリスターアセットの変動倍率は、一種のレバレッジ(挺子の効果であり、信用拡張力を意味する)であるとも考えられる。何らかの要因が作用して銀行の自己資本が一単位変化すれば、与信能力を示すリスターアセットが最大で十二・五倍もの変化を生じさせるのである。

だが、この点は、八〇年代後半におけるわが国のバブル発生の原因としてことさらに強調されるべきではない。なぜなら、八%ルールのBIS基準は各国に共通な国際的ルールであり、日本に対してだげ適用されているわけではない。BIS規制下においてわが国の銀行の行動パターンに、他国とは異なった大きな影響を及ぼしたものがあるとすれば、まず第一は自己資本の補完的項目(T2)のなかに株式など保有有価証券の含み益を四五%も算入している点である。