2012年7月8日日曜日

バルチック指数急落、新興国向け輸送需要停滞

鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶばら積み船運賃の国際指標、バルチック海運指数(BDI、1985年平均=1000)が急落している。8日現在で前日比158ポイント(5.4%)下がり2764。これは2006年6月以来2年4カ月ぶりの低水準で、今年5月の高値に比べ8割弱も下がった。これまでばら積み船市況をけん引していた中国など新興国向け輸送需要が停滞していることが響いている。

米国向けのコンテナ船輸送は、昨年末からすでに失速していたが、その後も新興国向けの荷動きはばら積み船主体に堅調を持続。外航海運全体でみると、新興国向け需要の拡大が不動産不況に苦しむ米国向け失速を補う「デカップリング(非連動)」の構図が成り立っていた。ところが8月以降、新興国(中国)への鉄鉱石の荷動きに急ブレーキが掛かり、外航海運におけるデカップリング論は力を失った。

海運業界全体のムードはすでに楽観から悲観に変わっている。こう感じさせるのは、船主の建造・購入意欲が鈍化していること。世界的な需要拡大を当て込んだ建造・購入ラッシュが続いていたが、明らかに勢いがなくなってきた。

鉄鉱石などを運ぶケープ型(15万トン級)を例にとると、新造船の単価は今年8月には1隻9850万ドルの史上最高値を付けていたが、現在は約3%安い9600万ドル程度に下がった。中古船の売買価格に至っては、1億3400万ドル程度と8月に比べ14%下落。新造船、中古船とも02年後半から続いた上げ基調は完全に一服した。

ばら積み船では米国発の金融危機が下げを増幅させている面もある。運賃先物市場に入っていた投機資金が流出し、バルチック海運指数の下落を加速させた。この数年の外航海運市況の高騰局面では、明らかに投機的要素が相場を押し上げていたが、すでにこれまでの急落でこうした部分はほとんどはげ落ちたとみられる。今後の海運市況は需給をベースに適正水準を探る展開となりそうだ。