2012年6月14日木曜日

段ボール原紙、値上げ満額決着

王子板紙やレンゴー、日本大昭和板紙など板紙各社が打ち出していた段ボール原紙の値上げが、メーカー側の要求通り10月から1キロ10円の引き上げで決着した。板紙各社の周到な準備で値上げを進めた結果だ。

段ボール原紙は、2001年に10円、03年に5円、06年に5円、07年に7円と、いずれもメーカー側が満額の値上げで押し切ってきた。王子、レンゴー、日本製紙本社グループの3グループでシェア7割を握る寡占体制が武器になった。

今回の10円は、01年以来の大幅な値上げ。メーカー各社が9月20日―10月1日出荷分からの引き上げに対し、打ち出しを従来より1カ月ほど早め、3カ月前から値上げ要請を開始した。「原紙値上げが満額通ることを前提に、段ボールメーカーがその先のユーザーに価格転嫁する準備を進めて欲しいとの狙いがあった」と大手板紙メーカー幹部は語る。

従来より1カ月間ながくなった交渉期間を使って、板紙各社が力を注いだのが飲料や食品メーカーなど大口需要家向けの交渉だ。これまでの値上げでは、まず中小企業が多い段ボール専業メーカー向けの交渉を先行し、その決着によって大勢を固めてから大口需要家の交渉に入るのが通例だった。今回は、段ボール専業メーカーから「大口需要家向けも、段ボール専業メーカー向けも同時に決着するのが筋」との声が強まり、板紙メーカーも大口需要家向けの交渉に本腰を入れざるを得なくなった。

交渉の難航が予想された大口需要家も、飲料メーカーなどが9月中に値上げを受け入れ、満額浸透の流れができた。「値上げ幅の圧縮を狙って、何度も交渉を重ねたが、板紙メーカーが10円の引き上げで一歩も引かず、受け入れなければ安定供給に支障が出てきかねないと判断した」と大手食品メーカーの購買担当者は話す。

値上げが決着したばかりの段ボール原紙だが、今後、価格が維持される保証はない。価格引き上げの主因となった古紙価格が弱含んでいるうえ、原油価格も下落しているためだ。古紙はここ数年、中国向けの輸出増加で、価格も急上昇していたが、10月に入り、世界的な景気減速による需要減で現地価格が急落している。段ボール古紙の輸出価格はすでに国内価格を下回っており、今後、国内価格が引き下げられる可能性がある。

需要家側は「値上げの根拠である古紙や重油価格が変化すれば、値下げ要求することもありうる」(大手飲料メーカー)との姿勢だ。古紙価格が大きく下がれば、段ボール原紙についても値下げ圧力が高まるだろう。