2014年7月5日土曜日

深刻な地方財政危機

医療分野の不合理な規制によって、介護労働が歪められている。たんの吸引や経管栄養などの行為は「医療」行為と見なされ、医者の指示さえあれば家族や訪問看護婦はできるが、毎日通ってくるホームヘルパーはできないといった矛盾が多数発生している。本来なら、こうした領域は規制緩和して医師会の供給独占を打ち破りながら、同時にホームヘルパーを中心にして、介護労働にたずさわる人々に対する資格制度や職業訓練などの整備を急がなければならない。

いずれの問題も、医師会の既得権利害が絡んでいる。本来なら、地域医療センターを中心にして、医師・訪問看護婦・ケースワーカー・ホームヘルパーなどが連携をとって、寝たきりにさせない予防医療体制を構築するのが正しい政策である。それこそが、人々を寝たきりにさせないがゆえに、最もコストを低下させる効率的な方法だからである。ここでも福祉の将来ビジョンが決定的に欠如しているのである。

このように、さまざまな問題を抱えたまま、長期停滞局面が続いている状況の下で介護保険制度が失敗すれば、社会保障制度に対する信頼は地に落ち、一層の将来不安が増幅されるに違いない。税源の移譲が不可欠である。地方行財政分野でも、セーフティーネットの張り替えを急がなければならない。

ところが、地方財政は、依然として国の誘導政策にしたがって効果の薄い公共事業に動員され続けている。そのため、地方財政赤字の膨張は未曾有の規模に達している。国の公共事業政策に振り回された結果、地方の債務残高も九九年末で約一七六兆円(GDPの約三五・四パーセント)に達すると予想されている。そのため、地方財政の危険信号を示す公債費負担比率(一般財源に占める公債費の比串)が一五パーセントを超える地方団体数は、九二年時点で一〇六五団体であったのが、九七年度末の段階で一八五三団体つまり地方自治体の半数をはるかに上回るようになっている。

中でも、リゾート法や企業誘致のための工業団地造成を行ってきた地方自治体、あるいは政府の景気対策に協力して公共事業とりわけ地方単独事業(地方独自で行う公共事業)を増加させてきた地方自治体の財政が悪化している。また法人二税(法人事業税と法人住民税)の税収の落込みの激しい大阪府・神奈川県こに指定される寸前になっている。