2014年7月19日土曜日

財政政策の金融政策に及ぼす影響

金融取引が自由化、国際化されている現状では、ある程度以上の信用度をもつ政府、つまりほとんどすべての先進国の政府は外国市場で資金を調達し、これを国内に持ち込めるから、公債の中央銀行引受禁止だけでは、財政に節度を課すことはできないし、金融政策当局として、財政政策の影響を受けないわけにはいかない。

最近の事例からみると、財政政策の金融政策に及ぼす影響がとくに大きいのは、次のような場合である。一つは、財政赤字が大きく、それが主因となって景気が過熱し、インフレが進行している場合である。いま一つは、景気の停滞を財政で刺戟することが望ましいのに、その発動が遅れている場合である。このように、インフレや景気停滞の主因が財政政策にあることが明らかな場合、金融政策当局として、これは自分たちの責任外の現象であるとして、放置しておいてよいか、という問題がある。

異論はあろうが、右のような場合、金融政策では十分対処し切れないことが明白でも、状況に応じ金融引締めの強化または金融緩和の措置を講すべきである、と思う。財政政策も、規制緩和などの構造政策も、体質的、制度的に発動が遅れがちであるが、経済情勢は流動的である。たとえ最善の政策ではなくても、発動可能な政策を早めに実行に移すほうが、景気や物価の振幅をなだらかにするために有効である。

いずれにせよ、中央銀行は、形式的に財政赤字からの独立を維持することはできても、財政政策の影響から逃れることはできない。むしろ、その影響の方向や程度に応じて、機動的に対処することが、金融政策の宿命でもあり、真骨頂でもあるというべきではなかろうか。

なお、欧州連合がマストリヒト条約上、統一通貨への参加の条件として財政赤字の対GDP比の上限を定めているのは、適切な金融政策、健全な統一通貨の価値の維持のために、財政政策からの混乱要因を予防しておこうとの配慮からでたものであろう。