2014年6月20日金曜日

ODA資金をNGOに流す方針

日本のNGOにも実に大きな幅があり、その理念や活動は市民の監視の目にさらされて当然である。NGOはまだあまりにも日本社会の中でひ弱な存在と見られているせいか、きびしい批判にさらされることもなく、NGOをもっと強くすべきだという議論は高まっても、どんなNGOをといった論議にはならない。

こうした状況の中で、東京を中心に十一のNGOが集まって八七年に「NGO活動推進センター」(JANIC)を発足させた。外務省から「NGOが連合体を作ればODAの資金を出すから」と受け皿作りの働きかけもあったからだという。それより先に関西国際協力協議会を作っていた関西方面のNGOは自主性を重んじたいとこれには参加せず、「関西NGO大学」を開いたり独自の活動を続けている。

ODA資金をNGOに流す方針のもとで外務省は、「NGO・ODA連携策に関する調査研究」をオイスカ産業開発協力事業団の渡辺忠元事務局長、JANICの伊藤道雄事務局長、松井謙東京国際大学教授らに依頼した。八七年にまとまった報告書の中で、オイスカの渡辺氏は「外務省とNGOは協力して官民一体の機運を盛り上げ、ODAとのからみで外務省主導の開発教育をすすめるべきだ」と提言し、松井氏は「NGO・ODA連携強化を進めてゆくうえで政府系半官半民型NGOを支援することが望ましく、信頼に足る優良NGOを選定することが必要だ。ODA批判論を封じ込めるためには開発教育型NGOを支援すべきだ」と提案している。外務省のNGO活用政策の背景にある官民協力的発想が垣間見える。

外務省は、八九年度からODA資金をNGOに流す政策に踏み切った。一つはNGO事業補助金として、日本のNGOの海外プロジェクトに初年度一億一千六百万円を計上し、もう一つは。小規模無償資金協力制度で、第三世界のNGOに日本大使館を通じて資金を出す制度で初年度の予算は三億円たった。ただ、民主主義の伝統があり、政権交替もある西欧の政府と違って、先に述べた通りNGOを選別コントロールしようとする外務省など日本政府の姿勢のために、ODA資金を受けるべきか否かNGOで厳しい議論が巻き起こった。

結局JVCなど十五のNGOが二十三の小規模プロジェクトに交付を受けたが、日本企業を利するための政府のODA政策に協力したくないと、受け入れを拒んでいるNGOもある。現在、活動資金が最高でも三億円(JVC)、半数は五百万円以下という財政的に弱体な零細NGOが多い日本の現実では、ODA資金を受け入れたために、政府に対してどれだけ自立性を保ち得るかが問われているのだ。もっと幅広い市民の支持基盤を作らなければ、政府の援助政策の下請けになりかねない。