2016年3月8日火曜日

弁護士費用の負担者

そこで出てきたのが、改革審の意見書にも出てきた「弁護士費用の敗訴者負担」の議論です。せめて弁護士費用くらいは負けた被告に払わせようというものですが、ただ、これはあくまでも、勝つべき者が勝てる制度が前提になければ逆効果で、証拠収集手段の抜本的強化なしにはまったくナンセンスであるということだけは、ここで指摘しておきます。

いずれにしても現在では、当事者が裁判のために費やした血のにじむような労力は、決して金銭的には報われないことになっています。「裁判官は、立証のために被害者側かどれほど苦労するかにあまり理解がない」というのが、多くの弁護士の不満としてあるのです。

裁判官にしてみれば、「裁判に勝って名誉を回復できればそれでいいではないか」、「勝訴というお墨付きをもらえば、それはもう有り難いことなのだから、それ以上何か要るというのか」というのが彼らの感覚かもしれません。しかしそれでは、「有り難く判決書をちょうだいしろ」などと言われているような気持ちになってしまいます。

むしろ、賠償金を払ってもらうことになろうものなら、ご近所の人まで寄ってたかって攻撃するようなところがあります。「お前はそんなにまでして金が欲しいのか」などと罵られます。そうした種類の騒ぎが、一九八三年に三重県で起きた「ある隣人訴訟事件」をめぐってまき起こり、全国的に問題となったことがありました。