事実、業績の良い日本企業を見てみると、過去二〇年間の投下資本利益率は政府の発行する債券の利率よりも低いのである。ホンダがよい例だ。ホンダが自動車の生産に乗り出そうとしていた一九六五年から一九八〇年までの一五年間、資本利益率はオートバイだけを生産していた頃の九パーセントからわずか三パーセントに激減した。三パーセントの利益率なら、同じ金で政府債券(アメリカでも日本でも)を買ったほうかはるかに利率がいい。そのことを重々承知のうえで、それでもホンダは利益率が低くリスクの高いほうを選んだのである。
日産自動車の首脳は新車種の「インフィニティ」を発表するとき、むこう五年間は利益を期待していないと語った。アメリカだったら、四七パーセントの企業が初めの三年間で利益が出始めないような事業には投資しないだろう。アメリカ企業と同じ投資規準を設定している企業は、日本ではわずか一〇パーセントしかない。
日本企業が円高にうまく対処できたのは、投下資本利益串を低く設定しているのに負うところが大きい。一層勤勉に働いてぜい肉を削る努力を重ねる一方で、松下や日立などのように利益を半分にしてでも市場競争力を維持しようという方針が効を奏したのである。松下の場合、一九七〇年代初めには売上げに占める利益の割合が一二パーセントを超えていたのに、一九八〇年代の末には七ないし八パーセントまで落ち込んでいる。日立の場合、利益の割合は一一ないしこ一パーセント台であったのが、六ないし七パーセントまで落ち込んだ。
ロンドンービジネスースクールと『エコノミスト』誌が最近おこなった、企業の純利益(収益から原材料費、賃金、生産に必要な資本コストを差し引いた残り)調査によると、売上げに対する純利益の割合が多い大企業(売上げが一〇億以上)上位三〇社のうち、二三社がアメリカ企業、四社がイギリス企業で、日本企業は一社もはいっていなかった。もう少し小規模な企業についても同様な調査をおこなったが、やはり上位三〇社のなかに日本企業は一社もはいっていなかった。
このところ日本でも高い利益率を目標にかかげる企業か増える一方で、より高い資本回転率やより大きなマーケットーシェアをめざす企業は減ってきている。しかし、「利益の極大化」といっても日本のタイムスケールは非常に長いので、アングローサクソン系企業のいう「利益の極大化」と同一に論ずることはできない。仮に市場金利を一〇パーセントとした場合、いまから一五年後の利益は一ドルに対してわずか二四セントにしかならず、それまでの一五年間にかかったコストをカバーできるとは思われない。
おもしろいことに、日本人は利益を第一に追求するアメリカ企業の姿勢こそアメリカ製品の国際競争力を低下させる最大の原因であると考えている。この見方を裏返せば、日本企業がみずからの強さの原因を何と認識しているかがわかるだろう。投資目的の株主から見れば、自分の持ち株に買い手がたくさんつけばつくほど高い値段で売却できるから好都合、ということになる。良い値がつけば売るIこれが普通だ。しかし、生産志向の経済論理では、企業運営の独立性を守るために、高値がついても株を売らない。
2014年9月8日月曜日
2014年8月11日月曜日
第三の候補者が大量得票する
さらに、従来の考え方からすれば、経済問題が選挙の主要な争点になるはずだが、二〇〇八年の選挙では、そうではない理由が今一つ考えられる。従来からの「君たち、経済問題だよ」という考え方が、実際は正しくないといえるのかもしれないのだ。一九九二年、ビルークリントンは、この有名なスローガンを掲げたにもかかわらず、全国投票でわずか四二%の得票宰でしか、勝利を収めていないのである。
アメリカとしては異例のことだが、ジョージ・ブッシュが破れたのは、第三の候補者が大量得票をしたからだ。すなわち、テキサス出身のビジネスマン、ロス・ペローが、右翼と孤立主義、それに保護貿易を標榜して、ブッシュ大統領に入るはずの票を、一九%も獲得したのだ。二〇〇八年にも同様のことが起こるかもしれない。というのは、ペロー氏と回しビジネスマンで、ニューヨーク市長のマイケルーブルームバーグが、独立系候補としてえ候補することを考慮しているからだ。彼はぺ口ー氏のような独立主義者ではないが、十一月の大統領選挙の行方を大きく左右するかもしれないのである。
しかし、ビルークリントンがジョージーブッシュに差をつけて、勝利を収めた理由は、単に景気後退だけではなかったようだ。両候袖に見られた大きな違いは、経済政策の相違よりも、クリントン氏が、ブッシュ人統領と違って、一般市民の関心事にいっそう重点を置いたことである。今まで副大統領の多くは、引退する上司に代わって立候補してきたが、今回はディックーチェイニー副大統領が立候補しないために、現職副大統領の候補者がいなかったからだ。経済衰退の原因を、直接、共和党のジョンーマケインのせいにすることはできなかった。
二〇〇六年来、アメリカ議会は、ジョージ・W・ブッシュ大統領が率いる共和党ではなく、民主党が掌握しているので、議会選挙においても、不況を単に政権担当の共和党の責に帰して、投票するのは難しいのである。それ以上に、これまでアメリカ大統領選挙が展開されてきたなかで、きわめて驚くべき事実がある。一年前、経済評論家に、大統領予備選挙、なかでも民主党の予備選挙で、主要な経済問題は何かと聞けば、きっと貿易と中国問題の二つだと、すぐさま答えたに違いない。
誰しも、一九八四年と一九八八年に、日本との貿易赤字を俎上に載せたように、中国との膨大な貿易赤字が、選挙の争点になると予想し、人気取りのため、候補者の中国叩きが激しく起こるものと思っていた。しかしそれは起こらず、中国の名さえ、ほとんど話題に上らなかったのである。中国が、これまで中国叩きを免れたのは、サブプライムローン問題が明確に示したように、アメリカの経済危機は国内で発生したものなので、外国を容易に非難することができないからと思われる。
アメリカとしては異例のことだが、ジョージ・ブッシュが破れたのは、第三の候補者が大量得票をしたからだ。すなわち、テキサス出身のビジネスマン、ロス・ペローが、右翼と孤立主義、それに保護貿易を標榜して、ブッシュ大統領に入るはずの票を、一九%も獲得したのだ。二〇〇八年にも同様のことが起こるかもしれない。というのは、ペロー氏と回しビジネスマンで、ニューヨーク市長のマイケルーブルームバーグが、独立系候補としてえ候補することを考慮しているからだ。彼はぺ口ー氏のような独立主義者ではないが、十一月の大統領選挙の行方を大きく左右するかもしれないのである。
しかし、ビルークリントンがジョージーブッシュに差をつけて、勝利を収めた理由は、単に景気後退だけではなかったようだ。両候袖に見られた大きな違いは、経済政策の相違よりも、クリントン氏が、ブッシュ人統領と違って、一般市民の関心事にいっそう重点を置いたことである。今まで副大統領の多くは、引退する上司に代わって立候補してきたが、今回はディックーチェイニー副大統領が立候補しないために、現職副大統領の候補者がいなかったからだ。経済衰退の原因を、直接、共和党のジョンーマケインのせいにすることはできなかった。
二〇〇六年来、アメリカ議会は、ジョージ・W・ブッシュ大統領が率いる共和党ではなく、民主党が掌握しているので、議会選挙においても、不況を単に政権担当の共和党の責に帰して、投票するのは難しいのである。それ以上に、これまでアメリカ大統領選挙が展開されてきたなかで、きわめて驚くべき事実がある。一年前、経済評論家に、大統領予備選挙、なかでも民主党の予備選挙で、主要な経済問題は何かと聞けば、きっと貿易と中国問題の二つだと、すぐさま答えたに違いない。
誰しも、一九八四年と一九八八年に、日本との貿易赤字を俎上に載せたように、中国との膨大な貿易赤字が、選挙の争点になると予想し、人気取りのため、候補者の中国叩きが激しく起こるものと思っていた。しかしそれは起こらず、中国の名さえ、ほとんど話題に上らなかったのである。中国が、これまで中国叩きを免れたのは、サブプライムローン問題が明確に示したように、アメリカの経済危機は国内で発生したものなので、外国を容易に非難することができないからと思われる。
登録:
投稿 (Atom)